人に何かを頼む。それは相手の時間や労力を自分のために費やしてもらうことを意味する。それだけに「ずうずうしい奴と思われないか」などと考え、つい言葉をのみ込んでしまった経験は誰にもあるだろう。しかしビジネスはある意味、「頼み―頼まれる」ことで成り立っている。職場で気軽に「頼める」関係を築く方法を考えよう。
そもそも、なぜ私たちは頼むのが苦手と感じるのか。目白大学で心理学を教える渋谷昌三さんは、頼み下手な人には2つのタイプがあると言う。「気が弱い人」と「完全癖の人」だ。気が弱い人は断られるのが怖くて頼めない。一方完全癖の人は、物事が思う通りに進まないと気が済まないから、人に頼まずすべて自分で抱えてしまう。
「気弱な人は、まず仲の良い人に、断られる心配のない簡単な頼み事をして頼むことに慣れましょう。完全癖の人は、他人は自分以上のことはできないと腹をくくるとよいでしょう。頼んだ結果にストレスをためないことが肝心です」
ここから一歩進んで頼み上手になるには、日頃から頼める環境・関係を作っておく努力が欠かせない。全くの初対面や心理的な距離がある相手では、当然ながら「頼み―頼まれる」関係性は作れない。この関係を築く基礎となるのが心理学で言う互恵性の原則だ。
人は他人から何らかの恩恵を受けると、お返しをしなければならない気持ちになる。車を運転している時、自分が誰かに譲られたら、自分もまた誰かに譲りたくなるのと同じである。つまり、普段から相手の頼み事を引き受けておけば、自分が頼む立場になった時に、相手が断りにくくなるのだ。そして次に大切なのが相手のメリット。
「何の得にもならないことを積極的に引き受ける人はいません。上手にメリットを伝えるのは頼む際の礼儀のようなものです」
ギブ・アンド・テークで信頼関係を築く。頼み上手になるための条件を一言で言えばこうなる。ビジネスパーソンとしての人間力を磨くことが、そのまま頼み上手への近道になると言える。
渋谷昌三氏
目白大学人間社会学部教授
Shouzou Shibuya
1946年生まれ。学習院大学卒業、東京都立大学大学院博士課程単位取得満期退学。心理学専攻、文学博士。山梨医科大学教授を経て現職に。非言語コミュニケーションを基礎とした「空間行動学」という新しい研究分野を開拓。
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