前回の続きより
頭の中で、場数を踏む
「そんな身も蓋もないことを言うな! 我々一般のビジネスパーソンは芸人ではない。毎回、違った内容を、違った場面で違ったクライアントに提案する。しかも、すきあらば難癖をつけようとする厳しい目にさらされてだ。その成否で、何千万円、何億円というお金がかかっている。1回1回が勝負なのだ」
まじめなビジネスパーソンであればあるほど、あがるつらさを深刻に訴える。
場所もケースも違うといっても、ビジネスパーソンにとっても場数を踏むことはあがり防止に有効なのだ。実際に場を踏まなくても、場数を踏むのと同じ効果があるのが「メンタルリハーサル」。頭の中で何度も場数を踏む方法である。
まず、現実のプレゼン場面を想定する。プレゼン相手も具体的にイメージする。あらかじめ情報を集め、そこに参加するメンバーもできる限り書き出し、各人のキャラクターも調べられるものは調べておく。
当日話すべき内容を書き出し、覚え、それに対する相手方の突っ込みも予測できるものはすべてに回答を紙に書いて用意しておく。これらをおおよそ記憶し、一人芝居のようにやってみる。
そしてテープにとって後で振り返る。自分が相手だったら、満足するか? 得するか? どこを突っ込みたくなるか? できれば、先輩や同僚にテープを聞いてもらうのが理想だが、そうもいかないことが多いだろう。自分なりに納得がいくまで何度も繰り返す。
これで、場数を踏むのと近い体験をしたことになる。しないよりは10倍あがらないメンタル状況になっている。メジャーのイチローも松坂も、マラソンの野口もみんなやっている方法だ。
ネガティブリハーサルをする
ここで大事なのは、「ネガティブリハーサル」を一緒にやっておくことである。ネガティブリハーサルとは、私の造語である。「最悪の事態が発生することを想定しておけ」ということである。
メンタルリハーサルで、おおよその事態に対応できると思っていたら、それとはまるで違う展開になったときの対処法だ。
(1)パニックですべての言葉が飛んでしまう。
(2)予定の時間がなくなり「5分のところ、なんとか1分でやってくれ」といわれる。
世の中、何があってもおかしくない。「ありえない」ことが起こるのが、現実社会だ。
(1)の時の対処法は、決め台詞を用意しておく。「緊張で言葉がうまく出てきません。恐縮ですがレジュメを読ませていただきます。ご不明な点についてご質問いただければ、お答えできるかと存じます。どうか、どんどん突っ込んでいただけますでしょうか」といった具合だ。
(2)に対しては、「了解いたしました。レジュメの1番だけご説明し、詳しいことは個別にご連絡いただきますよう、連絡先のアドレスを書いておきました。どうか、ご連絡いただきますよう。皆様にとって、必ずや損にならない情報をお届けいたします」と言って、できれば名刺も配るぐらいのつもりでいる。
「何とかなるさ」と思わずに、「何となってもOK」という状態を作る。イメージの中で「あらかじめの修羅場」をリハーサル」しておくことで、リアルな場数を踏むのと同じ効果が得られる。プロのしゃべり手やスポーツマン、できるビジネスパーソンは、みんなやっている。
梶原 しげる(かじわら しげる)1950年生まれ。早稲田大学卒業後、文化放送のアナウンサーになる。92年からフリーになり、司会業を中心に活躍中。東京成徳大学客員教授(心理学修士)
結婚相談所ベルMe(ベルミー)では、埼玉を中心に良縁をお探しの方に、手厚くサポートさせて頂いております。